大河道 雷刃の雑想録

「評論家の言うことを信じてはいけない。何故なら評論家が讃えられて彫像が作られた事など一度もないのだから」 ジャン・シベリウス(作曲家)

私的・作曲家 服部克久

作曲家の服部克久さんが6月に世を去られました。それについて音楽の技法や作家性のようなものは全くの門外漢なので私的に思い出に残っている曲を一寸。服部さんの一番最初に触れたのは再放送の「トム・ソーヤーの冒険」。これを書くに至って久々にOPとEDを聞くとやっぱり良いですね。OPにバンジョーを使ってカントリーミュージックのような雰囲気を出していたり、EDはサビから入るホーンセクションが正にミシシッピー川の大きさを感じさせるような温かみを感じさせたり。個人的に一番思い入れが大きい曲は「小公女セーラ」のEDの「ひまわり」。OP「花のささやき」のドラマチックな曲調に対しておとなしめなイントロなのですが、サビから入ってくるストリングスで雰囲気が変わります。二番からは合いの手のように入ってきますが、一気に曲の厚みが増しますね。この二曲での服部さんは編曲のみで作詞はなかにし礼さん、作曲は森田公一さんです。アニメを手掛けられた本数は多くありませんが、意外なところで劇場版の「北斗の拳」(TV版は青木望さん)、1999~2000年にはサンライズ製作の「星界の戦旗」、「無限のリヴァイアス」、「アルジェントソーマ」の音楽を手掛けられています。TVドラマで印象深いのは第二シリーズから担当された時代劇「江戸の旋風」シリーズでしょうか。前作の西部劇を思わせる曲の雰囲気を次ぎつつノリのいいOPテーマ(余談ですがプロレスラーの故・ラッシャー木村さんの晩年の入場曲に使われてもいたりします)。や物語のクライマックスによく流れた壮大な「美しき夜明け」。また馴染んだ曲を一新した「新・江戸の旋風」のOPのストリングスの厚みは一度聞いただけで痺れました。他に同じ時代劇で小林旭さん主演の「旅がらす事件帳」の音楽も手掛けられていて、主題歌の「みだれ雲」は作曲・宇崎竜童さん&作詞・阿木曜子さんのコンビで編曲が服部さん。純然たる歌謡曲というよりは歌謡ロックのような赴きでYouTubeに行けば動画があったと思うので宜しければ是非。服部さんは山下達郎さん竹内まりやさん夫妻やさだまさしさんのストリングスアレンジも数多く手掛けられていたそうで、先日の「山下達郎のサンデーソングブック」での服部さん追悼特集で達郎さんが話されていたエピソードで、まりやさんの「駅」のセルフカバーのレコーディングで大サビ前の間奏を達郎さんはサビのメロディでやろうと思っていたら服部さんが「ちょっと15分ちょうだい?」と言って別のメロディでストリングス各パートの楽譜を書き上げた、という話を聞いて改めて作曲家・アレンジャーとしての非凡さを感じました。それにしても他にも「音楽畑」シリーズやイベントでの指揮や音楽監督で世界中を飛び回っていらしたんですね。本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました。本日、ここまで。

 

 


https://youtu.be/6l69hY-b6SI