大河道 雷刃の雑想録

「評論家の言うことを信じてはいけない。何故なら評論家が讃えられて彫像が作られた事など一度もないのだから」 ジャン・シベリウス(作曲家)

荒野の素浪人・変わる峠九十郎


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世界的スター三船敏郎主演の連続TV時代劇、「荒野の素浪人」。しばらく見れてないなあ、CSでも最近放送されないですね。先日世を去られた名匠・菊池俊輔作曲のマカロニウエスタン全開のテーマ曲は聞くとテンションが上がります。登場人物は...

・峠九十郎(三船敏郎)

素性不明の謎の浪人。凄まじい剣の腕前で必殺剣法「八方達磨返し」を振るう。髷は第一シリーズはムシリで第二シリーズは総髪。第二シリーズの着物の家紋、丸に木瓜は三船家の家紋なのだとか。

・鮎香之介(大出俊)

通称「五連発の旦那」。早撃ちの名手で優男で女好きの浪人。マフラーがトレードマークで、ニヒリスティックな性格はさる大名の御落胤という出自が背景にあるため。

・すっぽんの次郎吉(坂上二郎)

二人のマネージャーを自称。いつも旅の先々で一儲けしようとするが大抵失敗する。特技は死んだフリ。後番組「荒野の用心棒」に出てくるすっぽんの三吉は双子の弟。

この三人がその回の舞台になる宿場町や村などに何となく集まり、その土地の悪を倒したらまた三人バラバラに去っていく。物語の基本構造はほぼ西部劇です。しかし第一シリーズと第二シリーズは少し違いが。


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第二シリーズは音楽が黒澤明岡本喜八の映画音楽を支えた佐藤勝に交代、重厚な雰囲気の音楽に。監督陣も三船プロのTV時代劇を支えてきたメンバー(石川義寛、丸輝夫、宮越澄)に加えて東宝(森谷四郎、出目昌伸)や松竹(貞永方久)に大映(田中徳三池広一夫、村山三男)、東映(吉川一義)出身の監督が。雰囲気も第一シリーズで百人斬りの超人的な技を見せたり、喜怒哀楽がはっきりしていた九十郎が第二シリーズでは常にムスッと何処か不機嫌な表情で台詞が一言のみ、なんて回も。

明朗で痛快な第一シリーズに対して世の理不尽、権力の横暴に怒る九十郎の姿が印象的な第二シリーズ。もっと個人的な言い方だと平均的に楽しめるが故に突出した回が少ない第一シリーズと当り外れが大きいものの当たればとんでもない一発の第二シリーズ。比べる訳ではないですが、どちらも魅力的な作品なのには変わりなし。時代劇専門チャンネルで放送された時のCMのキャッチコピーは、「本物の男は、時代を超える」。

少し余談を。第二シリーズ三十四話「傷だらけの勇者」のプロットは長七郎江戸日記第一シリーズ三十二話「とらわれた長七郎」に恐らく流用されているのでは。脚本(小川英、胡桃哲)のクレジットも一緒で、展開はどちらも同じように見えながら細部の違いで物語の展開がちょっと変わってきます。

本日、ここまで。

(文中敬称略)