アイコンからの揺り戻し・西部警察
はい、どうも。今回書きたいのは西部警察PARTⅢの46話「冬の軍団長」という回です。
全国ロケシリーズも関西編を残し、あの最終回への助走が始まった時期の頃の一作と言う印象ですね。
物語はラジオの海賊放送をやっている公平、木田、則子の三人がある会話を偶然傍受した所から始まり…
その内容はある女性が邪魔になる前に自殺に見せかけて消せ、といういわゆる殺人教唆。
なにかの冗談だと思いつつ念の為この会話を公平は録音しておく。
翌日港から車に乗った女性の水死体が発見され、加川係長は自殺として処理しようとするがそこに南が異を唱える。遺体の自殺にしては不自然な状態を聞く中で大門は、このような事件の裏にいつも浮かぶ野上経済研究所の捜査に木暮課長の了承を経て踏み切る。
新聞で自分たちが傍受した無線が真実と知った木田は、公平にテープのダビングを持ちかける。テープを恐喝に使う事を察した公平は止めようとするが、
木田「今まで迷惑ばかりかけてきたオフクロに家の一つでも買ってやりたいんですよ…」
公平「わかった。無理はするなよ。」
翌日、木田はテープを使って野上に脅しをかける。テープと金を引き替える約束をつけるが…
しかし野上は強大な組織力で木田をいとも簡単に消してしまう。
木田の遺したメモをじっと見つめる公平。
そして木田の葬式に参列し、仇討ちを誓う。
そんな中、木田の身元を調べる内に公平へ辿り着いた大門はテープの在処を問いただすが…
公平は頑として口を割らない。公平が必ず野上へ接触すると睨んだ大門はあえて公平を解き放す。
そして公平はやはり野上へ強請をかける。
一方公平の動きに何かあったら連絡してほしいと則子に頼む大門。公平を野上への囮に使う大門のやり方を則子は激しく非難する。
則子「警察は犯人を捕まえるためなら人がどんな危険な目にあっても平気なの?そのサングラス取りなさいよ。どういう冷たい眼でそんな事をしているのか見せなさいよ!」
大門「…頼んだよ」
木田への弔いの思いを海賊放送で語る公平。野上との取引は、明日…
そして当日。最初から消しにかかる野上たちに狙われる公平をかばって大門が撃たれる!
公平が金と思っていた渡されたのはただの紙の札束。撃たれながらも大門反撃の一発!
紙の札束が舞う中大門は公平を安全な所へ避難させ、団員達があとは一網打尽。南が大門の思いを代弁するように公平に言い聞かせる。
南「我々もな、被害者の仇を討つつもりでやっているだよ。あんたには不満かもしれないが犯人を捕まえる事が、我々にとっての仇討ちなんだ」
そして西部署。腕を吊るした大門と則子が行き合う。
則子「…ありがとう、ございました」
大門「いえ」
お互い何かもう一言…と振り返るが、やはり別れる。
ラストは冬の街路樹をひとり歩く大門。思えばこの時期の団長は大掛かりな事件であちこち全国へ出張っては現場の指揮をしてクライマックスにスーパーZやヘリで颯爽と現れてはショットガンを必殺必中させてからの大爆破が定番であり、そしてそれがある種の様式美でした。
それは引換に人間・大門圭介が全く掘り下げられなくなった様な気がします。五年も続いている上にアクションドラマにヒューマニズムを持ち込むのはナンセンスなのでしょうが、この回はそれ故なんだか記号的な存在になった大門が正面から非難されたり敵の銃弾に被弾したりとこれまでとはどこかイレギュラーな展開。一度記号から人間への揺り戻しをさせる様な感じです。
この回の脚本を担当されたのは金子成人さん。姉妹作の大都会シリーズは全シリーズ執筆されていますが、西部警察はこの回のみ。大都会でもどちらかといえばアクションと言うより大都会PARTⅢの「自動車泥棒」のようなドラマ寄りな話の印象が強いです。
西部警察はロケ回以外はただの刑事ドラマなんて意見を見たことがあるのですがそんなことはないんじゃあないかなと思い今回はこれを書いてみた次第です。物語の流れはグチャグチャですが、ここまで読んで頂いたならば幸いです。近い雰囲気の「少年Aの二時間」や「北帰行」についてもいずれ書いてみたいなと思いつつ、
本日、ここまで。