大河道 雷刃の雑想録

「評論家の言うことを信じてはいけない。何故なら評論家が讃えられて彫像が作られた事など一度もないのだから」 ジャン・シベリウス(作曲家)

非情のライセンス・深海綾という女


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今は亡き名優・天知茂の代表作「非情のライセンス」。全3シリーズある中で第2シリーズは全124話のロングラン。その中で殉職や退場した人物がかなりいました。しかしこのドラマは天知茂ありき、会田刑事一人で事件を解決する回もあったりするので他の人物は正直セミレギュラーと言ってももしかしたら過言では無いかも知れません。その中でもさらに短期間や散発的なセミレギュラーを例に挙げると...

・弾三郎刑事(北島三郎)

登場する度に左遷されて所轄が変わっているので会田に遭遇する度にそこを弄られる。直情型で情に脆く、関係者に肩入れし過ぎる所が難点。明確な退場エピソードは無し。

・山岸医師(大友柳太郎)

会田の白血病を受持つ医師。腕は確かだが無頼の酒好きが祟りメスが握れなくなり故郷へ帰る事に。彼の退場により会田の白血病の設定が完全に消滅する。

...とこんな感じ。

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そして75話「兇悪のワイン」から登場するのが岸田今日子演じる元弁護士で銀座のクラブ「F」のオーナー、深海綾。f:id:sekennohitohaubiwosasu:20201213002944j:image

この回ではまだオーナーではなく、元弁護士の経験を活かして夜の銀座で働く女性達がトラブルに巻き込まれた際の相談役。彼女の友人である「F」のママが事件に巻き込まれ、彼女が帰ってくるまで店を引き継ぐ決心を決めるまでがこの回。

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そしてそれ以降会田はなにか夜の街が事件に絡むと「F」に赴き綾から色んな噂の情報収集をするのですが...その時の雰囲気がまあ大人のムードというかアダルティで。昭和の大人の世界ですね。元弁護士で銀座のクラブの女オーナーという一見荒唐無稽な人物を演じる上でリアリティを持たせるために岸田今日子は最適の人選だったのでは、と思います。

会田は「会田」、「会田さん」と呼ばれるのが殆どでしたがこの人だけは「会田くん」呼び。この作品で会田を完全に上から見れるのは矢部警視(山村聰)だけと思っていたら会田を上から見れる存在がもう一人いたことをこの回で思い出しました。

この深海綾は98話で退場となります。しかし97話で坂井刑事(宮口二郎)、99話で右田刑事(左とん平)が殉職して何かの変化を感じていると101話からメンバーを一新(松山英太郎篠ひろ子財津一郎。しかしこの三人が揃う事は1度も無し)、そしてサブタイトルから「兇悪」も消えた実質第3シリーズとして再スタートを切る事となります。本日、ここまで。

(文中敬称略)