大河道 雷刃の雑想録

「評論家の言うことを信じてはいけない。何故なら評論家が讃えられて彫像が作られた事など一度もないのだから」 ジャン・シベリウス(作曲家)

渡哲也・さすらいの弧影

今年は辛い訃報が多かったですね。先日時代劇専門チャンネルで今年世を去った渡哲也の追悼企画で主演作の長編時代劇「四匹の用心棒」シリーズ全5作が放送されました。
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渡哲也と時代劇はイメージがやはり大都会や西部警察、日活時代の「無頼」シリーズのイメージが強くてなかなか結び付きにくい印象です。全く無い訳ではないんですけどね。近藤勇土方歳三をやっているし、途中降板とはいえ大河で勝海舟もやっています。

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全五作が大体140分くらいなのでかなりのボリュームがあります。一作目は藤堂四兄弟の物語ですが、二作目からはキャラクターはそのままでかかし半兵衛こと金子半兵衛に変わって行く先々で陰謀に巻き込まれそこで知り合った面々と共に立ち向かうのが基本の流れ。そしてその裏には老中水野忠邦(丹波哲郎)の影が常に覗く...という展開。

何故かかし半兵衛かと言うと片足を常に引きずっているという設定のため。これは渡自身が足の怪我の影響で実際に足を引きずっているのもあるようです。

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出演者も豪華で敵方で舘ひろしや中条きよし、村井国夫。ヒロインに片平なぎさ名取裕子秋吉久美子、小手川祐子、十朱幸代。各作品での仲間の用心棒には夏八木勲若林豪勝野洋綿引勝彦松崎しげる、井上順、秋野太作など。そして神田正輝も二作に友情出演。

嬉しかったのは西部警察で共演していた庄司永健武藤章生の出演。大物になると素浪人の役所広司、侠客の梅宮辰夫や忠臣蔵でお馴染み脇坂淡路守を演じる萬屋錦之介が渡哲也と貴重な共演を見せてくれます。

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硬軟織り混ぜたキャスティングだけでなく毎回ガトリング砲や火縄銃の嵐をかいくぐり斬り合う壮絶な殺陣は「ワイルドバンチ」を思わず想起しました。

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仲間を喪い、満身創痍になりながらも半兵衛は陰謀の首魁を討ち果たす。しかしそこには死屍累々の屍の数々。

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一作目、二作目はほぼ同様のラスト。また何処へと去り行く半兵衛に「おじちゃーん!」と関わった少年の呼び声に足を止めるも、それを振り切るように歩き出す半兵衛の姿はやがて主題歌「風蕭蕭と」と共に消えて行きます。
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口を真一文字に結び黙って彼方へ歩く姿に俳優・渡哲也と人間・渡瀬道彦の生きざまを何処か垣間見れたような気がしました。

何となく始めた拙いブログですが、お読みいただきありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします。

今年はこれにて撃ち止め、よいお年を。

(文中敬称略)


渡哲也 風蕭蕭と - YouTube