大河道 雷刃の雑想録

「評論家の言うことを信じてはいけない。何故なら評論家が讃えられて彫像が作られた事など一度もないのだから」 ジャン・シベリウス(作曲家)

題材と素材

題材:作品の内容となる材料

素材:元になる材料

(三省堂国語辞典より)

鬼滅の刃」が相変わらずヒットを続けてますね。この勢いだとアニメの二期があるのかな?どうせやるなら完結までやってほしいですね。そのおかげかどうか解りませんが当初鬼滅より期待をかけられたと思われる「STAND BY ME ドラえもん2」の興業成績が思ったより伸び悩んでいるとか。

ここからは下らない世方の戯言です。このドラえもんを手がけた山崎貴監督は私は好きではありません。「もう映画を撮るな!」とかそう言う訳ではないです、むしろどんどん撮って下さい。私は見ませんが。山崎監督は二作目まではオリジナルでしたが三作目「ALWAYS 三丁目の夕日」以降は色んな原作を元に自分流にアレンジした作品が大半を占めます。山崎監督にとって原作は自分の創作の題材ではなく、何か映画を作りたい時に使いやすいただの素材にしかすぎないのでは、と思っています。

YouTubeで「もし太陽にほえろが現代に甦ったら?」というコンセプトのMADを長年アップされてる方がいらっしゃいます。太陽にほえろだけでなく、色々と作品の幅を広げられているようでファンもいらっしゃるようです。私も何本か拝見しました。しかし合わなかった。初めは「やはり俺も自分が否定していた権威主義や懐古主義者だったのか」と自己嫌悪に陥りましたが、少し間を空けてもう一度見返すとそこには前述していた題材と素材の違いを感じました。変な例えですが太陽にほえろ松花堂弁当の容器とするならそこに全く違うものを詰めた感じ。同じ動画としてでもかえって権利元に配慮した画像とオリジナルBGMと文章だけの物に胸を打たれたりして。なんというか結局は「根っこに愛があるか否か」なんですよね。そういえば昔こんなCMコピーがあったなよぁ、「愛だろ、愛」。

 

私的プロレス名勝負・ライガーVS小原

1993年11月20日後楽園ホール、当時平成維震軍の度重なる乱入行為に異を唱えた獣神サンダー・ライガー。その流れを受けて維震軍のメンバーとのシングルマッチ連戦が組まれます。今回語らせていただくのはその二戦目、対小原道由戦。本当はこれを書く前に試合を見るべきなのですがビデオ時代に視聴したきりでYouTubeヤフオクでも映像やビデオが見つかりませんでした。なので完全に記憶の断片で書く事をご容赦願います。

試合の最中突如小原がライガーのマスクに手をかけて破ります。それに対して当然ライガーは激怒。場外マットを剥がして投げ捨てパワーボム、エプロンへのブレーンバスターとエグい攻撃。小原もジャンピングネックブリーカーで返すもライガーは低空ドロップキックからの足四の字固めとまたエグい返し。最後は隙をついて会場に響く「小原ァっ!」の叫びとともに顔面への掌打一発。喰らった小原はスーっと大の字に倒れ失神、そこを強引にエビに固めて3カウント。試合後も無意味なマスク剥ぎに対してライガーの怒りは収まらなかったとか。

90年代、新日本プロレスのビデオシリーズに「徹底検証」と題して試合とその試合をしたライガーとタイガー服部レフェリー(当時)と田中リングアナ(当時)のコメンタリーでもう一度見ていくという内容です。その中でまあライガーがまるで他人事のように「ひでー事するな〜」とか「頭にきて覚えてないですね(笑)」とコメントしていました。色んな選手のシリーズがあって好きでしたね。ライガーは常々マスクマンの宿命としてマスクを狙われます(それを逆手に鬼神ライガーが生まれましたが)、しかしその怒りで暴走する姿もまた魅力の一つ。選手以外の活動でも他団体に門戸を開いたりジュニアでヘビー級に挑戦するなど今では普通の事を切り開いた功績は本当に大きいと思います。もうライガーの引退から一年経とうとしているんですね、早いなあ。本日、ここまで。

(文中敬称略)


獣神サンダー・ライガ - Jushin Thunder Liger - YouTube

忠臣蔵・垣見五郎兵衛と立花左近

そうか、今日は忠臣蔵の討ち入りの日か。この時期になると時代劇専門チャンネル東映チャンネルでは往年の各社オールスター出演忠臣蔵などを放映するので私の父などもうウハウハです。「やはり主役は知恵蔵・右太衛門、悪役ならば月形龍之介山形勲に限るが薄田研二も中々...」などと未だに語ります。

少し逸れましたが忠臣蔵といえば四十七士各々のドラマが一つに収束していくのが魅力。その中の所謂「大石東下り」で大石内蔵助が名乗る偽名「日野家御用人 垣見五郎兵衛」。私はこちらで覚えていましたが作品によっては「立花左近」だったりします。三波春夫の歌謡浪曲でも「立花左近」。正誤はともかくwikiで調べると垣見姓を名乗ったのは本当でもエピソードは後年の講談や映画による創作で歌舞伎の勧進帳がベースのようです。

それでも忠臣蔵は何度みても泣きます、いい年こいて。特に里見浩太朗主演の忠臣蔵は涙腺に来ます。「天野屋利兵衛は男でござる」が無いじゃないか!なんて声もありますが。最近は違った視点から描いた作品もあるようですが、忠臣蔵を全く知らない世代がいると言うのもこれもまた時代でしょうか...本日、ここまで。

(文中敬称略)


https://youtu.be/dIa8V5Wm7_g

非情のライセンス・深海綾という女


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今は亡き名優・天知茂の代表作「非情のライセンス」。全3シリーズある中で第2シリーズは全124話のロングラン。その中で殉職や退場した人物がかなりいました。しかしこのドラマは天知茂ありき、会田刑事一人で事件を解決する回もあったりするので他の人物は正直セミレギュラーと言ってももしかしたら過言では無いかも知れません。その中でもさらに短期間や散発的なセミレギュラーを例に挙げると...

・弾三郎刑事(北島三郎)

登場する度に左遷されて所轄が変わっているので会田に遭遇する度にそこを弄られる。直情型で情に脆く、関係者に肩入れし過ぎる所が難点。明確な退場エピソードは無し。

・山岸医師(大友柳太郎)

会田の白血病を受持つ医師。腕は確かだが無頼の酒好きが祟りメスが握れなくなり故郷へ帰る事に。彼の退場により会田の白血病の設定が完全に消滅する。

...とこんな感じ。

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そして75話「兇悪のワイン」から登場するのが岸田今日子演じる元弁護士で銀座のクラブ「F」のオーナー、深海綾。f:id:sekennohitohaubiwosasu:20201213002944j:image

この回ではまだオーナーではなく、元弁護士の経験を活かして夜の銀座で働く女性達がトラブルに巻き込まれた際の相談役。彼女の友人である「F」のママが事件に巻き込まれ、彼女が帰ってくるまで店を引き継ぐ決心を決めるまでがこの回。

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そしてそれ以降会田はなにか夜の街が事件に絡むと「F」に赴き綾から色んな噂の情報収集をするのですが...その時の雰囲気がまあ大人のムードというかアダルティで。昭和の大人の世界ですね。元弁護士で銀座のクラブの女オーナーという一見荒唐無稽な人物を演じる上でリアリティを持たせるために岸田今日子は最適の人選だったのでは、と思います。

会田は「会田」、「会田さん」と呼ばれるのが殆どでしたがこの人だけは「会田くん」呼び。この作品で会田を完全に上から見れるのは矢部警視(山村聰)だけと思っていたら会田を上から見れる存在がもう一人いたことをこの回で思い出しました。

この深海綾は98話で退場となります。しかし97話で坂井刑事(宮口二郎)、99話で右田刑事(左とん平)が殉職して何かの変化を感じていると101話からメンバーを一新(松山英太郎篠ひろ子財津一郎。しかしこの三人が揃う事は1度も無し)、そしてサブタイトルから「兇悪」も消えた実質第3シリーズとして再スタートを切る事となります。本日、ここまで。

(文中敬称略)

影同心・書くのを忘れて殺し節


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「次回 影同心の殺し節は影同心と火盗改が張り合う料亭の仲居女。その亭主が盗っ人の疑いで捕らえられ拷問の末殺される。やがて女も哀しみの果てに自殺、役目をかさに非道の限りを尽くす火盗改に影同心奉行所の面目を賭ける。次回影同心、惚れた弱みの殺し節に御期待下さい。」(第5話の予告編より)

今回は前回書くのを忘れてしまった回での被害者の遺品を使った殺しを書いてみようかと思います。

(ご指摘ありがとうございました)

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今回の被害者おかよが自らの喉を貫いた柳刃包丁を勘平が使用。物言わぬおかよを見て何か訳知りの行商多吉に話を聞くとおかよが今回のワル・火盗改の戸崎が配下二人を使って手込めにし、非業の最期を遂げた一部始終を聞く。

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料亭と長屋を追われたおかよの面倒を見ていたおとらは戸崎がおかよの体が目的で亭主を罠に掛けた可能性を示唆する。勘平の怒りが静かに燃え、せめてもの慰めと枕元の小さな木片で作った亭主志ん助の位牌に「かよ」と書く。 

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奉行の許しを受け影同心は勝負に出る。

「かくて罠は仕掛けられた。あとは獲物を追い出し、罠に掛かるまで追いつめるだけである」(ナレーション)

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右近と茂左衛門が配下を仕留め、残るは戸崎。お佐知と源太で部屋に錠をかけ足を封じ、いつものクセで日頃愛用の煙管で一服しようとした隙に潜んでいた勘平がおかよの柳刃包丁で戸崎の胸元を貫く。

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戸崎が息絶える様をしっかりと確認し、勘平は包丁を反転させそっけなく真下に落とす。そして包丁が床に刺さる音が静かにこだました。やがて陽が登り、三人は退屈ないつもの勤務に一旦戻る。

うわぁ、画像が全然合っていなかった...どうかご容赦を。それにしても火盗改や寺社方は悪役になる機会が多いなあ。それを逆手にとったのが影同心Ⅱの堀田源八郎なんでしょうか。入れさせない、ではなく入れない。5話までの監督を見ると工藤栄一監督(1本)と倉田準二監督(2本)が必殺に関わってますね、イミテーション的作品を作る上で必殺シリーズの現場を知っているうってつけの監督たちだったというのは考えすぎでしょうか。本日、ここまで。

 

必殺仕置屋稼業・OPの同心円とブルズアイ


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晴らせぬはこの世の恨み人知れず地獄旅

物言わずを呪え闇に響く迷い唄

その声を哀れとは思うが悲しくは思わず

深く胸に聞けこの恨み唄

(新番組予告ナレーション)

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必殺シリーズの楽しみの一つ(だと思う)、OPナレーション。仕置屋稼業と言えば現代の姿に扮した登場人物たち。これには「必殺は時代劇の姿をした現代劇」という意味があるのだとか。

もう一つ気になったのがこれまた定番である陰影の強い登場人物のアップ。映像は中心の円から一気に引いて円の集合で全体が見える構図。形としてはいわゆる同心円。ここで浮かんだのが射撃等で使われるターゲット、「ブルズアイ」と呼ばれるタイプ。

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見たことがある方も多いのではないでしょうか。それを付加して考えると見ようによっては主水達が狙っているように見えるしあるいは狙われているようにも見える。ひょっとするとこれを見ているこちらを狙っているのかも、と...考えすぎか。

ブルズアイのWeb辞典のリンクはこちらから。

https://www-weblio-jp.cdn.ampproject.org/c/s/www.weblio.jp/content/amp/%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%BA%E3%82%A2%E3%82%A4?usqp=mq331AQQKAGYAYPsucej3eTwJLABIA%3D%3D

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必殺シリーズで何が好きと聞かれれば仕置屋稼業が好きと答えています。どこが良いと聞かれれば「ちょうどよさ」と答えています。この「ちょうどよさ」が後々のシリーズ全体の骨組みの一部になっているのではないでしょうか(作品によってその加減が変わったりもしますが)。結局なんだかんだで必殺シリーズは全部好きという根幹は変わりません(笑)。

本日、ここまで。

 

斬り捨て御免!・OPの曲は何?

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私的お気に入り時代劇の一つ、「斬り捨て御免!」。これに長年の疑問がありました。「第一、第二シリーズのOPに流れる曲は何?」というもの。ごく稀に正月ショッピングモールに行くと耳にする事があったのでおそらく渡辺岳夫さんの作曲ではない。では一体...と思いつつ時間が過ぎたある日、YouTube勝新太郎さんの三味線の演奏を見ていると件の曲が。どうもこの曲は長唄の「滝流し」と言う曲だそうで、下の動画で演奏しているのは杵勝会の方々。動画の最後に演奏された方々の名前が「杵屋」とあるのでもしかしたら勝新太郎(長唄の名前は杵屋勝丸)さんやそのお父上杵屋勝東治さんに縁があるのかも。動画は5:40くらいから「滝流し」の演奏になります。
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そして気になるのがもう一つ。第一シリーズのEDといえばこの「君はやさしかったか」。これが途中から...
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この「いなせ節」に五週分変わります。これもなンだろうなと考えてwikiを調べると1980年7月9日放送の「江戸の怪盗流れ星」から8月6日放送の「黄金地獄の闇を斬る」までこの曲に変更。ここで浮かんだのが歌詞の「月もいなせな隅田川 隅田川 」。まさかテレ東の隅田川花火中継に引っかけている?と思い今度は隅田川花火中継の歴史を見ると1978年、東京12チャンネル時代からスタートしている模様(斬り捨て御免!は1980年放送)。うーん、これはただのこじつけかな。
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そして作詞の「檪 文平」とはどんな人?と調べたら「男はつらいよ」、「三百六十五歩のマーチ」などで有名な作詞家の星野哲郎さんの別名義。他にも「阿里あさみ」の名義で座頭市物語(TV)の主題歌「おてんとさん」も手掛けられています。一つの曲でここまで広がるとは...しかし調べものをしてもある程度当たりが付けやすい良い時代ですね。

本日、ここまで。御免!(斬撃音)


https://youtu.be/3tRxfEfUGZg